既存の屋上防水の種類と見分け方について~

屋上防水は、建物を長期間保護するために非常に重要な役割を果たしています。しかし、年月が経過するにつれて、防水層は徐々に劣化し、そのメンテナンスが求められます。既存の屋上防水の種類を理解し、その見分け方を知ることは、適切な修繕や再施工を行うために非常に重要です。この記事では、屋上防水の主要な種類とそれぞれの特徴、見分け方について詳しく解説します。


1. 屋上防水の種類について

屋上の防水には、いくつかの種類があります。代表的なものには、アスファルト防水、ウレタン防水、シート防水、塗膜防水などがあります。それぞれの防水方法には特徴があり、施工方法や使用材料が異なります。以下で、各種類について詳しく見ていきましょう。


防水工事の種類について過去に投稿していますので、そちらをご覧ください。


アスファルト防水

アスファルト防水は、長年にわたって多くの建物で使用されてきた伝統的な防水方法です。アスファルトを熱して防水層を形成するため、耐久性に優れ、紫外線や水分に強い特徴があります。特に、屋上の広い面積に施工しやすいことから、大規模な建物でよく使われています。


ウレタン防水

ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する方法です。施工後に柔軟性を持ち、ひび割れに強い特徴があります。立体的な形状や複雑な形状の屋上にも対応できるため、マンションの屋上やバルコニーなど、小規模な面積でもよく使用されます。


シート防水

シート防水は、合成ゴムや塩化ビニール(PVC)などのシート状の防水材を使用して施工する方法です。シートを屋上に貼り付けて防水層を作り、耐久性が高く、耐水性にも優れています。特に施工が早く、比較的短期間で完成するため、効率的な防水工事を希望する場合に選ばれることが多いです。


塗膜防水

塗膜防水は、液体の塗料を塗布することで、防水層を形成する方法です。ウレタン防水と似ていますが、使用する塗料の種類によって異なります。一般的には、アクリル系やシリコン系の塗料を使用し、比較的安価で施工が簡単なため、小規模な屋根や屋上に適しています。


2. 既存の屋上防水を見分ける方法

既存の屋上防水がどの種類であるかを見分けることは、修繕や再施工を行う際に非常に役立ちます。防水層の種類を見分けるためのいくつかの方法を紹介します。


見た目で見分ける

屋上に施された防水層は、その見た目からある程度、種類を推測することができます。


アスファルト防水

アスファルト防水は、黒色でツヤのある表面が特徴的です。表面に小さな粒子や砂のようなものが見えることが多く、施工が比較的厚くなります。トップコートが塗られている場合もありますが、その場合はシートの表面が砂のようなものがあるとアスファルトシートの場合が考えられます。


ウレタン防水:

ウレタン防水は、滑らかで光沢感のある表面が特徴です。色が選べるため、色ムラが見られる場合もありますが、一般的に均一な仕上がりになります。


シート防水

シート防水は、シートが屋上に貼られているため、つなぎ目が目立つことがあります。シートの継ぎ目が直線的で、接合部分が目視できることが特徴です。


塗膜防水

塗膜防水は、塗装のような仕上がりが特徴で、手で触れると若干の柔らかさや薄さを感じることができます。塗膜の厚みが一定でないことが多く、経年劣化によりひび割れや剥がれが見られることもあります。


質感や厚みを確認する

手で触れてみることで、屋上防水の質感を確認することができます。アスファルト防水は、手触りがしっかりしており、厚みが感じられることが多いです。一方で、ウレタン防水や塗膜防水は、柔軟性があり、表面が滑らかであることが特徴です。爪を立ててみて、爪の痕が表面に残っているとウレタン塗膜防水になります。


また、防水層の厚みを測ることも有効です。アスファルト防水は比較的厚い層を形成するため、厚みが1mm以上あることが多いですが、ウレタンや塗膜防水は通常、数ミリ程度の薄い層になります。


3. 既存の屋上防水の劣化状態を確認する

既存の防水層が劣化しているかどうかを確認することは、修繕を行うために不可欠です。劣化している防水層は、長期的に建物に水害をもたらす可能性がありますので、早期に見つけて対応することが重要です。


アスファルト防水の劣化症状

アスファルト防水が劣化する場合、表面がひび割れたり、剥がれたりすることがあります。長期間の使用によって紫外線や温度差で膨張・収縮を繰り返し、防水層に亀裂が生じることが多いです。また、割れた部分から水が浸入しやすくなります。


ウレタン防水の劣化症状

ウレタン防水は柔軟性が高いですが、紫外線や水分の影響を受けやすく、経年劣化でひび割れや剥がれが発生します。特に、施工から10年以上経過したウレタン防水は劣化が進行し、ひび割れが目立つようになることが多いです。また、表面に塵や汚れが溜まりやすく、排水が悪化することがあります。


シート防水の劣化症状

シート防水は、つなぎ目が弱点となりやすいです。シートの端が剥がれてしまったり、熱で変形することがあります。また、シートと接着されている部分に隙間ができると、水が侵入しやすくなります。特に、シート防水が施工された場所は、接合部分に水分が滞留しやすいので、注意深く確認する必要があります。


塗膜防水の劣化症状

塗膜防水は、特に紫外線や雨水の影響を受けやすく、表面が劣化してひび割れや剥がれが発生しやすいです。塗膜が薄いため、早期に補修が必要となることが多いです。また、経年によって水分が染み込み、膜が剥がれることもあります。


4. 既存の防水層に適した修繕方法

既存の屋上防水の種類と状態に応じた修繕方法を選ぶことは、建物の耐久性を保つために非常に重要です。適切な修繕方法を選ばないと、防水層が十分に機能せず、再度の漏水が発生してしまうこともあります。


アスファルト防水の場合

アスファルト防水の場合、ひび割れや剥がれが進行している場合、部分的に再施工を行うことが必要です。防水材の追加や表面の補修を行い、完全に防水層を再構築することが求められます。


ウレタン防水の場合

ウレタン防水の補修には、劣化した部分にウレタン樹脂を再塗布する方法が一般的です。小さなひび割れの場合、専用の補修剤を使って補修することができますが、大規模な劣化が進んでいる場合は、再施工を検討する必要があります。


シート防水の場合

シート防水の修繕には、シートの接合部分を再接着する方法や、部分的に新しいシートを貼る方法があります。シートが破れている場合は、適切なシートを選んで交換を行うことが重要です。


塗膜防水の場合

塗膜防水の場合、ひび割れや剥がれが見られる箇所に新たに塗膜を重ねることで補修します。全体的な劣化が進んでいる場合は、塗膜を一度完全に剥がし、再塗布を行う必要があります。


6. 屋上防水の定期点検の重要性

屋上防水の劣化が進行する前に、定期的な点検を行うことが非常に重要です。点検を怠ると、わずかなひび割れや剥がれが、最終的に大きな問題に発展する可能性があります。特に、雨季の前や冬の寒波が来る前など、季節の変わり目に点検を実施すると、早期に問題を発見し、対処することができます。


点検の際には、防水層に目立ったひび割れや剥がれがないか、排水口が詰まっていないか、湿気が溜まっている箇所がないかを確認します。特に、シート防水や塗膜防水の場合、早期の劣化兆候を見逃さないように注意深く確認することが必要です。


また、屋上に設置されている設備(空調機器や防水層を支える構造物など)が防水層に影響を与えることもありますので、これらの周辺も合わせて点検することが大切です。定期的なメンテナンスと点検を行うことで、屋上防水の寿命を延ばし、漏水リスクを未然に防ぐことができます。


まとめ

屋上防水の種類とその見分け方を理解し、それぞれの防水方法に適した維持管理を行うことが、建物の長寿命化に繋がります。防水層の劣化状態を早期に把握し、適切な修繕を行うことが、住居や事業所における水害を未然に防ぐために重要です。定期的な点検とメンテナンスで、屋上防水の効果を最大限に引き出し、安心して建物を使用することができます。