アスベストについて知っておくべきこと

アスベストは、その優れた耐火性や断熱性が評価され、かつて多くの建築資材に使用されていました。しかし、健康リスクが明らかになり、使用が禁止された今も、古い建物にはアスベストを含む建材が残っている場合があります。この記事では、アスベストの危険性、使用されていた建材、アスベストを含む建材を見分ける方法、取り扱いについて解説します。


1. アスベストとは?

アスベスト(石綿)は、天然の鉱物で、細かい繊維を持つ特性から、断熱材や防火材、耐熱材として多くの建材に使用されていました。アスベストには主に6種類の鉱物がありますが、一般的に建材に使用されたのは「クリソタイル(白石綿)」や「アモサイト(茶石綿)」です。アスベストは、耐熱性や耐薬品性に優れ、音の吸収や絶縁性も高いため、建築や製造業など様々な分野で重宝されました。


アスベストの特性と利点

アスベストの最大の特長は、その耐火性と断熱性です。火災に強いだけでなく、熱や化学物質に対する耐性も非常に高く、様々な工業製品に使用されていました。また、絶縁性や強度が高く、耐久性にも優れていたため、建材として非常に人気がありました。しかし、これらの利点が裏目に出ることになります。


健康へのリスク

アスベストは、目に見えない非常に細かい繊維として空気中に舞い上がり、吸い込まれることによって健康に大きな影響を及ぼします。主なリスクとして、肺がんや中皮腫、アスベスト肺などの病気が知られています。これらは長期にわたるアスベストの暴露によって引き起こされるため、使用が制限された今でも問題は続いています。


2. アスベストが使用されていた建材の種類

アスベストは、主に建築資材や工業用製品に使用されていました。具体的には、以下のような建材に含まれていました。


・屋根材

アスベストを含む屋根材は、1960年代から1980年代にかけて多く使用されていました。特に、「スレート屋根」や「アスファルトシングル」にアスベストが含まれていることが多かったです。これらは強度が高く、耐火性に優れたため、安価で実用的な建材として人気がありました。


・外壁材

アスベストを含む外壁材も多数使用されていました。特に、「サイディングボード」や「スレート板」にアスベストが含まれており、耐火性や耐候性に優れていたため、住宅や商業施設に多く使用されていました。


・断熱材

アスベストは、優れた断熱性を持つため、断熱材や防音材としても使用されていました。天井や壁の断熱材として、また暖房や空調設備の周りにも多く使われていたため、アスベストを含む断熱材が残っている場合があります。


・防火材

アスベストは、防火性が非常に高かったため、建物の防火対策としても使用されました。防火ドアや防火壁、防火パネルなど、火災からの防護を目的とした建材にアスベストが使用されていました。


・床材

また、アスベストは「ビニール床タイル」や「フローリング」にも使用されていたことがあります。これらは耐久性と防火性に優れた特性を持ち、商業施設や工場などで広く使用されていました。


3. アスベストを見分ける方法

アスベストが使用されていた時期の建物においては、建材にアスベストが含まれていることがよくあります。しかし、アスベストは目で見てすぐに判断することができません。以下に、アスベストを含む可能性がある建材を見分ける方法を紹介します。


・建材の種類を確認

アスベストが使用されていた建材は主に1950年代から1980年代に多く見られます。そのため、建物がこの時期に建設されたものであれば、アスベストを含む建材を使用している可能性が高いです。特に、スレート屋根や外壁材、ビニール床タイルなどは要注意です。


・破損や劣化に注意

アスベストを含む建材が劣化して破損している場合、そこから繊維が空気中に飛散する恐れがあります。もし、屋根材や外壁材、床タイルなどが古くなっていたり、破損している場合、アスベストが露出している可能性があります。目に見えない繊維が舞い上がると、健康リスクが高まりますので注意が必要です。


・専門家による調査

アスベストを含む建材が存在するかどうかを正確に判断するためには、専門の調査を依頼することをおすすめします。アスベストの有無を調べるためには、サンプルを取り、専門の検査機関で分析してもらうことが最も確実です。


4. アスベストに関する法律と規制

アスベストの健康リスクが明らかになり、各国ではアスベストの使用が規制されています。日本では、2006年にアスベストの製造・使用・輸入が原則として禁止され、現在では新たにアスベストを使用することはありません。しかし、過去に建材として使用されたアスベストが残る建物には、依然としてその危険性が存在しています。特に、古い建物に関してはアスベストが含まれている可能性が高いため、注意が必要です。


・アスベストの取り扱いに関する法律

日本では「労働安全衛生法」や「建築基準法」に基づき、アスベストを取り扱う際の規制が設けられています。例えば、アスベストを取り扱う業者は特別な許可を得て作業を行い、作業員は防護具を着用する必要があります。また、アスベストを含む建材の除去には厳しい手続きと安全基準が設けられています。これにより、作業員や周辺住民への影響を最小限に抑えることができます。


・アスベスト除去の義務

アスベストが使用されている建物を改修する場合、アスベストを取り扱う際には適切な処理が義務付けられています。アスベストが含まれる可能性がある場合、専門の業者に依頼して、安全に取り除く必要があります。これらの法的規制により、アスベストの除去作業は安全性を確保した形で行われ、住民の健康を守ることができます。


5. アスベストのリスク管理と取り扱い

アスベストの取り扱いには細心の注意が必要です。もし自宅や事業所にアスベストを含む建材があると確認された場合、適切な対策を講じることが求められます。


・アスベストの補修方法

アスベストが含まれている建材が損傷していない場合、無理に取り除く必要はありません。場合によっては、補修を行うことでリスクを減らすことができます。例えば、アスベストを含む屋根材が割れている場合、その部分を取り替えることで、アスベストの飛散を防ぐことができます。


・専門業者による除去

アスベストを含む建材が危険な状態にある場合、専門業者による除去作業が必要です。除去作業には、高度な技術と設備が必要となり、安全な作業を行うためには専門の業者に依頼することが重要です。作業が適切に行われないと、アスベスト繊維が空気中に拡散し、健康被害を引き起こす危険性があります。


まとめ

アスベストはかつて非常に有用な建材として広く使用されましたが、その健康リスクが明らかになったことで、多くの国で使用が禁止されました。既存の建物には今もアスベストを含む建材が残っている場合があり、それに対する適切なリスク管理が重要です。建物の改修や解体時には、専門業者による調査と適切な処理が求められます。アスベストに関する知識を持ち、安全な取り扱いを心がけることが、健康を守るために重要です。