建築現場の事故と対策

こんにちは。建築現場では、毎日さまざまな作業が並行して進められていますが、一歩間違えれば大きな事故につながるリスクも潜んでいます。高所作業中の転落、重機との接触、落下物、感電など、現場では想定外のトラブルが多く発生します。今回は、実際に起こりやすい事故とその具体的な対策についてご紹介します。現場の安全意識を高め、事故ゼロを目指す一助となれば幸いです。


1. 高所からの転落

建築現場において、最も多く発生している事故のひとつが「高所からの転落」です。厚生労働省の統計でも、死亡災害の多くがこの転落に関連しています。足場作業中に命綱をつけていなかった、あるいは足元が不安定だったといった些細なミスが命取りになります。


まず基本となるのが、安全帯【フルハーネス】の正しい着用と点検です。命綱の取り付け位置が適切か、機材に劣化がないかを毎日確認しましょう。


足場についても、専門業者による施工と、現場ごとの定期点検が欠かせません。手すりの有無、滑り止め処理なども重要なチェックポイントです。


また、作業手順や注意事項を朝礼で作業員全員に共有し、危険な場所では常に複数人で確認するなど、チーム全体で安全を支える意識が必要です。高所作業は油断せず、「自分は大丈夫」と思わないことが事故防止の第一歩です。


2. 落下物による事故

上からの落下物も、現場で頻発する事故のひとつです。ドライバーやレンチ、鉄パイプなどの工具や資材が落ちてくるだけで、大怪我や死亡につながることもあります。特に多層階での同時作業時に発生しやすいリスクです。


まず必要なのは、落下防止の措置です。工具は落下防止コードで体に結びつけ、資材は足場にしっかりと固定することが基本です。


作業中に不要となった部材やごみも、すぐに撤去・片付けることで足元の安全を確保できます。特に上部作業があるときは、下層の作業を中止するなど作業時間の調整とエリアの分離も有効です。


また、事故を防ぐ最後の砦として、ヘルメットの着用を徹底しましょう。軽い工具でも高所から落ちてくれば、頭部へ深刻なダメージを与えます。日常的に「落とさない」「落ちてこない」「守る」の3点を徹底することが落下物事故の防止につながります。


3. 感電事故

電気工事や配線作業がある現場では、感電事故のリスクがつきものです。仮設電源、コンセント、電動工具の誤使用などが原因で感電することもあり、場合によっては命に関わる事故になります。


感電事故を防ぐには、作業前の通電確認が重要です。ブレーカーを落とすだけでなく、他の作業者が誤って通電しないようにロックアウト・タグアウト(LOTO)を徹底しましょう。


また、絶縁工具や保護具(絶縁手袋・ゴム長靴など)の着用も基本です。これらは感電リスクを大幅に下げるため、点検・交換のサイクルも含めて管理が必要です。


仮設コードの露出や破損部分が放置されていると、知らぬ間に通電部に触れてしまうことがあります。コードの固定・保護カバーの設置といった予防策も欠かせません。


現場では、電気作業に関わる者全員が基礎的な電気知識と安全教育を受けることが、安全管理の要となります。


4. 重機との接触

現場で重機と作業員が接触する事故は後を絶ちません。バックホーやクレーンなどは死角が多く、運転者の目には作業員が見えない場合も多いのです。


まず、作業エリアの明確な分離が必要です。重機の稼働区域と人の通行区域を明確に分け、カラーコーンや柵などで物理的に区切ることで事故を防ぎます。


次に、誘導員の配置も効果的です。誘導員は重機の運転者と無線やジェスチャーで常に連携し、死角に人がいないかをチェックします。


さらに、重機の日常点検も欠かせません。ブレーキやホーン、警報装置などの不具合は、重大事故の原因になります。整備不良が原因で発生する事故も少なくないため、整備記録の管理も徹底しましょう。


作業員自身も「重機に近づかない」という基本行動を守ることが求められます。重機との距離感を常に意識し、自分の身を守る行動を心がけましょう。


5. 熱中症や体調不良

夏場の建築現場では「熱中症」が深刻な問題となります。特に直射日光の下での作業は体力を消耗しやすく、めまいや吐き気、意識障害を引き起こすことがあります。高齢の作業員ほどリスクが高く、重症化すれば命に関わることもあります。


まず、定期的な水分と塩分の補給が必須です。水だけでなく、スポーツドリンクなど塩分を含むものをこまめに摂取するよう、現場全体で声かけを行いましょう。


また、休憩時間の確保と環境整備も重要です。炎天下での作業では1時間に1回は涼しい場所で休憩を取り、扇風機や冷風機などで体を冷やす設備を整えます。


最近では空調服の活用や体調チェックシートなども導入されており、体調不良の早期発見に役立ちます。朝礼時には「無理をしないこと」「異常を感じたら報告すること」を改めて徹底しましょう。


6. 滑り・つまずき

足元の不注意から起こる「滑り・つまずき事故」は、軽視されがちですが非常に多く発生しています。特に雨天時や資材が散乱した現場では、足を取られて転倒する危険があります。


まず基本は、現場内の整理整頓です。コード類や工具は決められた場所に戻し、足元がすっきりしていることを常に確認します。


次に、滑りやすい場所には滑り止め処理を施しましょう。階段や仮設スロープなどは、滑り止めテープの設置や注意喚起の表示を行います。


また、作業靴の選定も大切です。滑りにくい靴底の安全靴を選び、定期的に靴の劣化をチェックする習慣も事故防止につながります。


日々の業務で慣れている場所ほど油断しやすいため、「歩く場所の安全確認」を習慣づけましょう。


7. 有害物質の吸引

解体工事や古い建材の取り扱いでは、「アスベスト」や「有機溶剤」などの有害物質を吸引するリスクがあります。長期的に健康被害をもたらすため、目に見えない脅威として軽視されがちですが、対策が不可欠です。


まず、作業前の有害物質の有無確認が第一歩です。解体前に含有調査を実施し、必要に応じて除去作業や封じ込め措置を行いましょう。


作業中は防じんマスクや防毒マスクの着用が必須です。また、作業場所には換気設備や集じん装置を設置し、粉じんの拡散を抑える対策が求められます。


さらに、作業記録と健康診断の徹底も重要です。長期間の作業者には定期的な健康管理を実施し、早期発見・早期対応を図ることで、被害を最小限にとどめられます。


8. ヒューマンエラーによる事故

人為的なミス、つまり「ヒューマンエラー」が原因で事故が起こるケースは少なくありません。たとえば、確認不足による資材の落下、指示の聞き間違い、道具の誤使用などが挙げられます。


この対策として有効なのは、声かけと確認の習慣化です。作業前の朝礼やKY活動(危険予知活動)を通じて、その日の危険箇所や注意事項を全員で確認することで、共通認識をもつことができます。


また、指差し呼称や復唱といった基本動作も効果的です。たとえば、作業開始時に「ブレーカーを落としました」「確認よし」と声に出して確認するだけで、事故の可能性を大きく下げられます。


安全は「仕組み」だけではなく「人と人とのつながり」から生まれます。現場では、上下関係を越えて声を掛け合える雰囲気づくりが何よりも大切です。


【まとめ】

建築現場には多くの危険が潜んでいますが、その多くは事前の確認とルールの徹底で未然に防げます。「慣れた作業こそ慎重に」「当たり前のことを確実に」が、安全管理の基本です。作業員一人ひとりの意識が事故を防ぐ力になります。すべての現場で、誰もが安心して働ける環境づくりを目指しましょう。