建物の漏水の原因について

建物における漏水は、住環境の快適性や建物の耐久性に直接影響を及ぼす重大な問題です。

漏水の原因は多岐にわたり、設計、施工、経年劣化、使用環境などさまざまな要素が複雑に関係しています。本稿では、漏水の代表的な原因を11項目に分けて考察し、それぞれの特徴や背景、対策について解説致します。


1. 屋上防水層の劣化

屋上は降雨や紫外線に直接さらされるため、防水層の劣化が進みやすい部位である。一般的にアスファルト防水やウレタン塗膜防水、シート防水が使用されているが、施工後10〜15年程度で劣化が進行する。ひび割れや剥がれが発生すると、雨水が建物内部に侵入する可能性が高まる。定期的な点検と再塗布、補修が不可欠です。


2. 外壁のひび割れ(クラック)

建物の外壁に発生するクラックは、構造上の応力集中や地震、温度変化などによって発生する。微細なヘアークラック(髪の毛の細さ程度のひび割れ)であっても、雨水が毛細管現象によって内部に侵入し、漏水の原因となることがある。特にALCパネルやコンクリート打ち放し仕上げでは注意が必要である。クラック補修材の充填や外壁塗装による保護が有効な対策になります。


3. シーリング材の劣化

サッシや外壁の目地部分にはシーリング材(コーキング)が使用されており、これが劣化すると雨水が浸入する。シーリング材は紫外線や熱によって収縮や硬化が進み、最終的には亀裂が発生します。

通常、耐用年数は5〜10年程度とされており(種類や施工環境によって異なります。)、定期的な打ち替えや増し打ちが必要である。


4. サッシまわりの施工不良

アルミサッシや窓まわりは、建物の中でも漏水リスクが高い箇所である。施工時に防水テープの貼り忘れやシーリングの不十分があると、雨水がサッシ枠の隙間から室内へ侵入する。さらに、強風時に吹き込むような豪雨では、その弱点が顕著に表れる。適切な納まりや水切り処理、施工後の水密試験が有効な対策となります。


5. バルコニーの排水不良

バルコニーの排水口が落ち葉やゴミで詰まると、雨水がたまり、笠木や立ち上がりから浸水することがある。特に防水層の立ち上がりが十分でない場合、浸水リスクが高まる。また、床面の勾配が不適切だと水たまりができやすくなり、排水口の定期清掃と防水層の点検が求められます。


6. 配管の劣化や亀裂

給排水管の老朽化によって、水漏れが生じることも多い。特に鉄管は内部腐食が進むと、ピンホールと呼ばれる小さな穴があき、長期間気付かれずに漏水することがある。近年では耐久性の高い塩ビ管や架橋ポリエチレン管が用いられているが、それでも継手部分の施工不良や振動による緩みなどで漏水するケースがあげられています。


7. 屋根の瓦・板金のずれ

瓦屋根や板金屋根は、強風や経年劣化によって部材がずれたり外れたりすることがある。特に軒先や棟部分など風の影響を受けやすい部位は要注意である。瓦の浮きや割れ、谷板金の穴開きなども雨漏りの直接原因となる。定期的な屋根点検と補修が重要である。


8. 天窓(トップライト)からの漏水

天窓は採光のために便利だが、構造的に雨仕舞が難しく、漏水のリスクが高い。設置時の防水処理が不十分だったり、パッキンやシーリングの劣化があると、雨水が容易に浸入する。特に斜め屋根に取り付けられた天窓では、重力によって水が集まりやすく、適切な水切りと勾配設計が求められる。


9. コンクリート躯体の初期欠陥(ジャンカや豆板)

鉄筋コンクリート造の建物では、施工時の締め固め不足や型枠からの漏水などにより、ジャンカ(空隙)や豆板といった欠陥が生じることがある。これらは外部からの雨水が内部鉄筋に達する通り道となり、漏水だけでなく鉄筋腐食や中性化の進行も引き起こす。非破壊検査や赤外線調査によって初期欠陥を特定し、早期に補修する必要がある。


10. 給排水設備の接続ミス・施工不良

トイレ、キッチン、洗面所などの設備機器における排水トラップや継手の接続不良も、室内漏水の原因となります。施工時にパッキンの締め付け不足や、異なる素材間の接続不良などがあると、水使用時にわずかな漏れが長期間続くことがある。これは漏水箇所が見えにくいため、発見が遅れやすい。完成検査時の水圧試験や通水テストが欠かせません。


11. 地下からの逆流・地下水の上昇

地下室や半地下構造では、雨水や地下水の上昇による逆流や浸水が起きる場合がある。特に排水ポンプの故障、雨水マスの詰まり、止水板の設置不備などが原因で、下水が逆流して床上浸水につながることもある。止水構造の強化とバックアップ用のポンプ設置が効果的である。


終わりに

建物の漏水は一見、局所的な問題に見えても、原因が建物全体に及ぶケースが多く、早期の発見と適切な修繕が極めて重要である。特に日本のように四季があり、多雨・多湿の気候条件下では、防水性能の維持管理が建物の寿命を左右すると言っても過言ではない。建物オーナーや管理者は、定期的な点検と専門家による診断を行い、未然に漏水を防ぐ体制を整えることが求められます。